駅売店のおばちゃん
おばちゃんとの出会いは、俺が初めて弁当を作ってもっていった
日のことだった。
初めての弁当で箸を忘れた。。
土地勘のなかった俺は、おばちゃんに、「すいません!ここらへんに箸売ってるとこないですか?!」
するとおばちゃんは、「うー・・ん。ないねぇ・・・」
「もしかして自分で弁当つくってきたの?」「えぇ・・まあ(笑」
「えらいねー!じゃあこれでよかったら」
といっておばちゃんが取り出したのは、おそらく自分の弁当用かと思われる●僧寿司の割り箸・・。
「え!いや悪いですよ!」「いいからつかって」
「本当にありがとうございます!!」
何度もお礼をいって、その日は無事飯をくうことができた。
それからというもの、毎回おばちゃんの出勤の日にもなると、
「おはよーございますー」「おやあんたかい。これオマケね」
といって、いつも買うペットボトルのお茶とマイセンライトの横に、小さな飴を添えてくれた。
「今日もあついですねー」などと
軽い世間話をしながら時は4ヶ月と過ぎた・・。
俺が夏休みにはいったのは25日。
それまで普通に「あんたはラッキーだよ」と飴をくれたりしていたのに。
夏休みから帰ってくると、店はシャッターが下りていた。
珍しいなー。売店も休日ってあるのかしら。
そんな暢気なことをかんがえていると、次の日も閉まっていた。
おかしいなーと思いつつ、2,3日が過ぎると、そこには一枚の貼り紙が。
『駅改装の為、当売店は8月31日をもって閉店致しました。長らくのご愛顧ありがとうございました。』
後悔先に立たず。
いつか箸のお礼をしようと思っていたのに、もうそれも無理だと言うことだ。
閉店の話はもっと前からあったはずである。
少なくとも8月に入ってからはわかっていたはずだ。
それなのに、まったくそんなそぶりを見せなかったおばちゃん。
人間的に大きかったと思う。60ぐらいだったのだろうか。
そして俺は、ちょっとあるいてコンビニまでお茶を買いにいくようになった。